書評束集(1) 中井久夫『樹をみつめて』(みすず書房) 平和を維持することの難しさ 二〇代に入ってすぐの頃、死ぬまでかけて読む本のリストを作った。そのリストをもとに出版社から目録をとり寄せて注文したり、古本街を回ったりしながら、三〇半ば頃まで文献や資料を買い漁っていた。見取り図を作り、自分なりの知の建築物を打ち建てようとしたのだった。ところ… トラックバック:0 コメント:0 2018年05月18日 続きを読むread more
松浦理英子『最愛の子ども』を読む 2017年2月7日 松浦理英子「最愛の子ども」(『文学界』2月号)読了。(2.13 訂正) 1.どんな作品なのか 久々に、小説を読む醍醐味と愉悦を、全身で感じながら読み終えることができた。なによりも作者・松浦理英子の実力が存分に発揮されていて、前作の『犬身』よりもこちらを高く評価したい、それくらい作品の完成度が高い、と思った… トラックバック:0 コメント:0 2017年02月12日 続きを読むread more
加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書)を読む その2 2. 以下、『戦後入門』に対して、思いつくままに感想を述べていきたい。 加藤典洋の『戦後入門』は、第一部「対米従属とねじれ」という『アメリカの影』以来のテーマが、もう一度振り返られている。そこで、『アメリカの影』を再読してみたところ、冒頭で、次のようなかなり辛辣な指摘が目に入った。 加藤は、江藤淳が村上龍の『限りなく透明に近い… トラックバック:0 コメント:0 2016年03月12日 続きを読むread more
村上龍著『オールド・テロリスト』を読む 村上龍の新作、『オールド・テロリスト』を一気に読了した。語り手(おれ)が『希望の国エクソダス』と同じ人物で、続編のような体裁をとっているけれど、特に関連付けて読む必要はないと思う。本編1篇で、十分すぎるほど独立した作品となっている(もちろん、関連させて読んでもいい。それはそれで、面白い観点を示すことができるかもしれない)。 と… トラックバック:0 コメント:0 2015年07月13日 続きを読むread more
書評・花戸貴司『ご飯が食べられなくなったらどうしますか?』 ふるさとの会でご一緒する高橋紘士氏より、東近江地域医療連携の「三方よし研究会」(主宰 小串輝男氏)を紹介していただきました。さっそく東近江市永源寺診療所に花戸貴司医師を訪ね、取材させていただきました。(永源寺診療所については、以下、ご覧下さい。) http://eigenji-clinic.blogspot.jp/2015/03/b… トラックバック:0 コメント:0 2015年05月30日 続きを読むread more
記録された「事実」と記録すること2 『造反有理』と『自閉症とは何か』 4. 『造反有理』の書評には、じつは第2ヴァリアントがある。 ●1968年、東大医学部の政治運動は、かの「赤レンガ闘争」として展開された。その主流(造反派)は翌69年の「金沢学会」で主導権を握り、そこから、従来の治療実践が激しい批判の俎上に乗せられていく。病院の権力性や収容的性格の糾弾(先進病院だったはずの松沢病院でさえ批判… トラックバック:0 コメント:0 2014年06月08日 続きを読むread more
記録された「事実」と記録すること 立岩真也『造反有理 精神医療現代史へ』を読みながら ドキュメントの作法1 1. 本年の3月30日、東京新聞書評欄に拙稿、「立岩真也著『造反有理』についての書評」が掲載された。それは「決定稿」として提出されたものであり、次のように書かれていた。 ●1960年代から70年代、日本の各地で政治運動の嵐が吹き荒れていたとき、精神医療に携わる医師たちにあっても、政治の闘いが自ら… トラックバック:0 コメント:0 2014年06月03日 続きを読むread more
中国について 沖縄県尖閣諸島沖での「漁船追突事件」はひと段落したようで、発表時には、時期はずれになってしまうかと危惧していた原稿があった。下記に転載するが、すると掲載前日の土曜(9日)、ノーベル平和賞に、中国人人権活動家・作家の劉暁波氏の受賞が決定したというニュースが流れた。前評判はあった。だからまったく意外というわけではなかったが、時期が時期だけ… トラックバック:0 コメント:0 2010年10月15日 続きを読むread more